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よこすか文学館

授爵を詠んだ歌

よこすか文学館<27>

横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。

〔咸臨丸の人々〕勝海舟(3)

勝海舟は折に触れ、短歌を詠んでいます。自らは、文学について、「何一つ修業したことはない」(『氷川清話』)と語っていますが、一方で、薩摩出身の歌人八田知紀やその弟子高崎正風に歌の添削を受けたことがあったようです(『海舟語録』)。さて、海舟は明治20年、勲功により伯爵に叙せられますが、それ以前に一旦、子爵の内命を受けていたようで、「今までは並のからだと思ひしが 五尺に足らぬししやくなりとは」という歌を詠んでいます。「子爵」と「四尺」の掛詞で、今まで自分では人並みの体だと思っていたが、五尺(約150㎝)以下の「四尺」ならぬ「子爵」とは意外だ、という歌意。ちなみに、同年の伯爵授爵者には板垣退助がいます。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)