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よこすか文学館

福沢諭吉の漢詩

よこすか文学館<30>

横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。

〔咸臨丸の人々〕福沢諭吉(2)

電力事業の実業家として著名な松永安左エ門は、福沢諭吉に親炙した人物で、『人間 福沢諭吉』(実業之日本社)という著書もあります。そのなかで彼は、福沢は聖徳太子、空海と並ぶ日本史上の偉人、と称賛しているのですが、欠点も指摘していて、福沢はかなりの「親ばか」だったようです。さて、そんな福沢は、長女が腸チフスに罹患した折、愛情ゆえの辛さを漢詩に詠んでいます。「(前半略)家門多福君休道(家門多福なりと君道ふを休めよ)/吾羨世間無子人(吾は羨む世間の子無き人を)」。四男五女併せて九人の子宝に恵まれた福沢でしたが、それだけ子ゆえの心痛は絶えず、子どものない人を羨ましいと思うこともあったのでしょう。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)