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よこすか文学館

大泉黒石

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横須賀が登場する文芸や横須賀にゆかりのある文学者を紹介します。

横須賀に死せる異色作家 大泉黒石

大泉黒石(1893-1957)はロシア人の父と日本人の母との間に、長崎県で生まれました。生後まもなく母は死去し、父はロシアに帰国したため、祖母に育てられました。『中央公論』を文壇の登竜門に育てた稀代の大編集者たきたちょいん滝田樗陰に認められ、大正8年、「俺の自叙伝」が連載され大評判となり、一躍文壇の寵児となります。これ以降、大正期は活躍をするのですが、次第に輝きを失っていきました。彼自身の虚言癖、混血児差別、陰湿な文壇事情、戦時における国家主義に起因するようです。戦後は米軍基地関係の仕事をしながら細々と執筆活動を続け、横須賀で亡くなりました。なお、ユーモラスな個性派俳優大泉あきら滉は黒石の子息です。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)