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よこすか文学館

前田夕暮の歌碑

よこすか文学館<99>

三浦半島に点在する文学碑や史的記念碑を実見し、作者やその作品の成立事情、碑の現状などについてご紹介します。

<前田夕暮の文学碑(富浦公園)>短歌

宵あさき長井往還行きにつつ
村湯の明りなつかしみけり

春寒し造船所こそ悲しけれ前田夕暮(1883-1951)は神奈川県大住郡(現・秦野市)の生まれ。明治から昭和前期に活躍した歌人です。代表歌の一つ「向日葵(ひまわり)は金の油を身にあびてゆらりと高し日のちひささよ」は多くの国語教科書に載録されています。

大正12年(1921)2月、東海道線列車中において夕暮は、北原白秋に邂逅し、白秋が夕暮の作品を激賞したことから意気投合し、そのまま三浦半島へ吟行に出かけました。旅中、当時の「長井村」で詠んだのが歌碑の歌です。「往還」は行き来する道のこと。日が暮れて長井村の街道を歩いていくと、村の共同浴場の明かりが見え、心惹かれるといった歌意。2月のまだ寒い時分、早く湯につかりたいという気持ちが伝わります。

実は、この旅がきっかけとなり、二人の交友が始まり、近代短歌史に名を残す超結社雑誌『日光』の発刊に繋がりました。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)