横須賀が登場する文芸作品(マンガも含む)や横須賀に縁のある文学者を紹介します。
横須賀市の久里浜を舞台とした小説です。「冬乃」はもともと長野県須坂市出身で、事情があって郷里を離れ、今は久里浜の海岸近くに住んでいます。夫の「佐々井君」の会社はブラックな環境で夫婦関係も何かぎくしゃくしているなか、元漫画家である妹の菫が、冬乃にカフェの経営を持ち掛けます。この冬乃とともに、「佐々井君」の会社の部下で、もとお笑い芸人の「川崎君」も視点人物となっていて、彼は会社で「佐々井君」以上に酷使されています。この二人を中心に、人間関係や感情のもつれがいろいろ描かれています。
山本文緒(1962-2021)は神奈川県生れ、神奈川大学卒。OL生活を経て少女小説作家としてデビュー。その後、一般文芸小説を執筆するようになり、2001年に『プラナリア』で直木賞を受賞しました。2021年に59歳で死去。
(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)