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よこすか文学館

福澤諭吉の寓話

よこすか文学館<31>

横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。

〔咸臨丸の人々〕福沢諭吉(3)

福沢には多数の著作がありますが、戯作風あるいは小説風の作品として、明治5年(1872)刊行の『かたわ娘』というものがあります(現在では差別語ではありますがご海容ください)。純粋の小説ではなく、寓話(たとえ話)です。ある裕福な家に娘が生まれたが、生まれつき眉毛がなく、また生え始めた歯が黒い。周囲は、業病だ、親の悪事のせいだ、などと噂する。しかし、年月が経ち娘が成長するうちに、不思議と彼女を蔑む噂が聞こえなくなったので、両親は喜んだ。どういうことかというと、当時、人妻になると眉を剃りお歯黒をつけるようになるから、彼女もそれと同じと見なされたという話。日本の陋習を揶揄した、いかにも福沢らしい作品です。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)