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よこすか文学館

伊藤博文の漢詩

よこすか文学館<34>

横須賀市にゆかりのある文学者や歴史上の人物にスポットをあてて、時代背景とエピソードを交えながら彼らの文芸を紹介します。

〔明治憲法起草の地夏島〕伊藤博文(2)

明治期の文人の例にもれず、伊藤博文も折にふれ漢詩を詠んでいます。『伊藤公全集 第3巻』(伊藤公全集刊行会)に、伊藤が詩を学んだ当時の漢詩人森槐南(かいなん)の手記「詩人としての公爵」には「脱俗超凡の巧妙なるは実に驚歎の外なし」という評価が見えます。ちなみに伊藤がハルビンで凶弾に倒れた際、同行していた森も被弾しています。その不慮の災禍の数日前、伊藤たち一行は、日露戦争の激戦地二百三高地を訪れていたのですが、そのときの詩が「夙に聞く二百三高地/一万八千骨を埋むるの山/今日登り臨みて無限の感/空しく看る嶺上に白雲の還るを」です。二百三高地攻撃の指揮官は伊藤と同じ長州出身の乃木希典でした。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)