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よこすか文学館

大島昌弘①

よこすか文学館<57>

横須賀が登場する文芸や横須賀にゆかりのある文学者を紹介します。

大島昌弘
『罪なくして斬られる-小栗上野介』(学陽書房)

本誌の「横須賀製鉄所物語」(井上吉隆氏)でもしばしば言及されている横須賀製鉄所の生みの親「小栗上野介忠順」(1827-1868)の後半生を描いた時代小説。小栗は、譜代の旗本としての忠義心の持ち主であり、相手が上司であっても自分の意見を断乎として主張する狷介孤高、直言の士です。それゆえ、幕府の存続のため改革を試み、また日本の未来のために横須賀製鉄所創建に尽力しますが、衝突と免職、辞職を繰り返します。結局、幕府は倒れ、小栗は隠棲先の上州権田村にて薩摩軍によって斬首されます。終章には、小栗の死から38年後、東郷平八郎が自邸に小栗の遺族を招く場面があります。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)