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よこすか文学館

折笠智津子

よこすか文学館<60>

横須賀が登場する文芸や横須賀にゆかりのある文学者を紹介します。

折笠智津子
『妻のぬくもり 蘭の紅』(主婦の友社)

著者は、横須賀生まれの俳人折笠美秋(1934-1990)の夫人。美秋は栄光学園中高を卒業後、早稲田大学入学、「早稲田俳句会」(1年上に寺山修司、大橋巨泉がいた)に入会し句作を始め、大学を卒業し東京新聞入社後も活動を続けました。しかし、彼は1982年、「筋萎縮性側索硬化症」の診断を受けます。この本は、身体のわずかの動きから夫の詠む句を読み取る作業など、難病の夫に寄り添う記録に、二人の馴れ初めや家族のエピソードなど発病までの思い出を織り交ぜたエッセイ風の読み物です。1986年の発刊なので、巻末の「むすびに」では「アキ(=美秋のあだ名)もまた生きる意欲を新たにしてくれることでしょう。そう願いながら」と記されています。

(洗足学園中学高校教諭 中島正二)