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よこすか文学館

折笠美秋

よこすか文学館<65>

難病による闘病生活の中、珠玉の作品を作り続けた横須賀出身の俳人折笠美秋(おりかさ・びしゅう1934-1990)の作品を紹介します。

八十八夜は雨歩けねば歩く夢 折笠美秋

美秋の俳句には、闘病の気持ちを強い調子で詠んだ、「燕ら去る西空 俺 死んでたまるか」といった句がある一方、「ついに足も萎え果てゆくか雨の秋」のような、自分の病を淡々と描く句もあります。また、「歩く夢覚め 夜半の雪を告げらるる」のように、動くことのかなわない現実と、自由な夢の世界を詠み込む句もあり、掲句もその一つ。「八十八夜」は、立春から88日目で、5月1~2日頃にあたり、唱歌にもあるように茶摘みの最盛期です。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)