> 新よこすか風土記 > よこすか文学館 > よこすか文学館<97>

Story新よこすか風土記

よこすか文学館

じょうきせんの碑

よこすか文学館<97>

三浦半島に点在する文学碑や史的記念碑を実見し、作者やその作品の成立事情、碑の現状などについてご紹介します。

<じょうきせんの碑(ペリー公園)>狂歌
泰平の ねむりをさます じょうきせん
たつた四はいで 夜も寝られず

嘉永6(1853)年、ペリー提督率いる4隻の軍艦が浦賀沖に現れ、日本の開国を求めました。「鎖国」状態だった日本は朝野とも大混乱、そのような世情を詠んだのが上掲の狂歌です。高級茶の「上喜撰」と「蒸気船」を掛けたもので、「上喜撰」を飲んで眠れないように、黒船の来航で夜も眠れない、といった意味です。

ところで、この狂歌の作者は、幕末の鯖江藩主で老中も務めた間部詮勝(まなべ・あきかつ)だという説があります。鯖江市ではこの説に依拠して、「さばえ狂歌コンクール」が開催されています。この説は『久里浜村誌』(1917年)の記載によるものですが、同書では上掲狂歌は「太平の眠を覚す蒸気船たつた二杯で夜もねられず」となっています。来航した4隻の黒船は帆船2隻と蒸気船2隻だったので、「二杯」の方が実態に即しています。

(洗足学園中学高等学校教諭 中島正二)